感染症<3>
(Infectious disease)

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細菌やウイルス、寄生虫など病原性のある微生物が私たちの体内に侵入して引き起こす病気を感染症といいます。私たちの体はたくさんの微生物と共存しているので、体に微生物が付くだけでは感染症にはなりません。感染症を発病するかどうかは病原体の感染力と体の免疫や抵抗力とのバランスによって決まります。今回は、食中毒について取り上げます。

食中毒


食中毒とは、人体に有害な物質(菌、ウィルス、自然毒など)により汚染された食べ物や飲み物を口にすることが原因で起こる病気です。原因となる食べ物や飲み物の摂取後しばらくして、腹痛、下痢、嘔吐、発熱などの症状が起こります。病気の症状や食べてから症状が出るまでの期間は原因によってさまざまで、数時間(黄色ブドウ球菌など)のものもあれば、数日間(病原性大腸菌、カンピロバクターなど)の場合もあります。細菌による食中毒は気温が高い6月から9月ごろに多く、ウイルスによる食中毒は冬に多いのが一般的です。 サルモネラ菌は加熱不十分な鶏卵や鶏肉、魚、ペットの便で汚染された食品や水に存在します。カンピロバクターも十分に加熱されていない肉、特に鶏肉などが原因になります。大腸菌は私たちの腸管の中にもいるような病原性のないものから、強い病原性を持つものまでさまざまですが、なかでも腸管出血性大腸菌(O157、O111など)は毒力の強いベロ毒素を出し、激しい腹痛や下痢、血便を起こすだけでなく、溶血性尿毒症症候群(HUS)や脳症といった重篤な症状を引き起こすことがあり、注意が必要です。2011年には焼肉チェーン店で生の牛肉摂取よる集団食中毒が発生し複数の死者が出ました。ノロウイルスは、カキなどの二枚貝の生食による食中毒の原因となるほか、感染した人から人へ感染する集団感染もしばしばみられます。冬が多いですが、年間を通して見られます。 食事の準備のときや食事を摂る前に、手洗いを中心に、食中毒予防の三原則:「つけない」(食材や調理器具を清潔に扱い、食品を触る前にしっかり手を洗う)、「ふやさない」(調理した食品は早めに食べる。冷蔵庫を活用する)、「やっつける」(食品は中心まで確実に加熱する)を守り、食中毒を予防しましょう。



(慶應義塾大学保健管理センター 河津桃子)

※本内容は「改訂・健康のすすめ―健康な学校生活のために(小・中学生用)― 2023」
(一貫教育校小中学校で配布)から引用、一部改変したものです。